プロとして活躍しているマンガ家さんたちもかつては新人さんだった(あたりまえだけど)。新人のマンガ家さんにとってデビューは良きにつけ悪しきにつけ、忘れられないターニング・ポイント。このコーナーでは、マンガ家さんのデビューの頃の話を質問形式で語ってもらいます。
【第16回目のゲスト/恋緒みなと先生】
【恋緒みなと先生への30の質問】
  • デビューはいつ頃ですか?
    1989年4月10日

  • デビュー作のタイトルは?
    『トマト倶楽部』

  • デビュー作の簡単なストーリーを教えてください
    学校を舞台に、3人の女の子が繰り広げるノー天気なH漫画

  • デビュー作でもっとも描きたかった事は?
    面白ければなんでも良かったのです。
    とにかくノリだけで描いていました。
    なお、上記の作品は未完状態です。

    いまさら完結させる気もありませんが…(笑

  • デビューした雑誌は?
    「キャンディータイム」(富士見出版)

  • どのような形でデビューしましたか?(マンガ賞受賞作、持ち込み作など)
    持ち込みです。
    持ち込んだ作品は没になりましたが、その場で決めた企画がそのまま
    デビュー作になりました。デビューと共に月刊連載を頂きました

  • デビュー作はマンガを描き始めてどのくらい(期間)でしたか?
    2年弱です。大学の漫研に入部してから描き始めました

  • またそれは何作目ぐらいでしたか?
    それまで漫画作品は、漫研の同人誌と同部の先輩が個人的に
    作っていた同人誌に描いたぐらいで、ちゃんと完成させた作品は
    2桁行ってないと思います

  • そのころの本業(学生、フリーターなど)はなんでしたか?
    工学部の大学2年生

  • そのころは本気でマンガ家を目指していましたか?
    自分が漫画家に成れるとは想像だにしていませんでした。
    先輩と飲み会で持ち込みを約束させられて、その場のノリのまま

    持ち込んで連載となったので、あまり深く考えていませんでした。
    持ち込み先も、部室に転がっていた成年漫画誌の中で、
    たまたま地図が載っていたと言う理由から決めたくらいです。
    バイト感覚だったのでしょうね(苦笑


  • もしマンガ家としてデビューしていなければどんな仕事につくつもりでしたか?
    印刷関係。大学で印刷関係を学んでいたので

  • マンガ家デビューの際の家族の反応はいかがでしたか?
    デビュー後、しばらく黙っていました。
    本業が学生でしたし、デビュー雑誌が成年漫画誌だったので

    言えませんでした。
    結局いつの間にかバレていましたが

  • 目標としていたマンガ家さんがいたら教えてください
    学生の頃、高田裕三さんの作品を良く読んでいました

  • そのマンガ家さんのどこにひかれていましたか?
    漫画、キャラクターの見せ方とそのためのストーリー展開、
    そして読者を紙面に引きつける技術。
    やはりメジャー誌の漫画家さんはすごいなと

  • デビュー作の原稿料または賞金は何に使いましたか?
    生活費に消えました。
    その分、親からの仕送りを減らしてもらいました

  • デビューが決まった時の感想は?
    とにかく、必死だったのであまり感動は無かったような気がします。
    それまでちゃんと完成させた作品が無く、締め切りが間近だった事も

    あり、編集さんにいろいろ指導してもらい必死に完成させました。
    苦しかったけど最高に楽しかったです

  • デビュー作が実際に雑誌に掲載された時の感想は?
    単純にうれしかったです。
    ただ、創刊したばかりの雑誌だったので、どこにも売ってなくて、
    深夜コンビニを走り回って探しました。
    その時の第一の感想は「疲れた…」です

  • デビュー前後でマンガに対する考えかたに変化はありましたか?
    特にありません。
    持ち込んで見て頂いた編集さんに、その日、小2時間ほど、
    漫画に対する考え方をたたき込まれました。
    それまでアシスタント経験もなく、漫画を描く事に対して何も

    知らない素人でしたから、その指導が全ての基礎となっています。
    良い編集さんに出会えて幸運でした

  • デビューの頃、編集者と打ち合わせをどの程度していましたか?
    自分の作品の打ち合わせは30分ほど、そのあと漫画について
    1時間ほど語り合いました

  • その頃編集者との打ち合わせでためになった事は?
    全て。とにかく、素人でしたから

  • 逆に編集者との打ち合わせで苦労したのはどんなときですか?
    自分の作品について苦労した記憶はありません。
    その編集さんは良い所を伸ばすという方針だったので、

    揉めた事はありません。
    作品制作経験が少なかった事もあり、自分が強く主張する根拠も

    なかったので。
    むしろ打ち合わせが楽しかったです。

    一番初めに見せる人=読者ですので、
    楽しませてやろう!  驚かせてやろう! 
    と意気込んで打ち合わせに向かいました。

    それは今でも変わりません。
    唯一苦労した事は、当時FAXを持っていなかったので、
    大学の授業後、東京まで1時間かけて通った事ぐらい。
    終電が無くなって編集部に泊まった事も何度かありました

  • 編集者との打ち合わせなどはどのような形でしていましたか?
    面談のみ。理由はFAXがなかった事。
    それに電話では本当の反応も感想も分かりませんから

  • 編集者とのつきあいで思い出に残るエピソードがありましたら教えてください
    デビューしたての頃は編集部によく泊まり込みしました。
    そのとき、徹夜麻雀したりいろいろ遊んで頂きました

  • デビューの頃、良きライバルとか、語り合えるマンガ家さんはいましたか?
    ライバルは自分以外の全ての漫画家さん。
    面識はありませんでしたが、勝手にライバル認定していました。
    同時期デビューした陽気婢さんが同雑誌にいましたが、
    お互い本業持ちだったのでいろいろ苦労話はしました

  • デビューの頃、マンガ家として成長していくために特になにかした事、勉強した事などはありますか?
    特にありません。連載とともにいろいろ勉強させてもらいました。
    そのうえ原稿料までいただいて感謝の気持ちでいっぱいです

  • デビューの頃、マンガ家として特に何か悩んだ事などはありますか?
    全くないです。基本的に楽天家ですから

  • デビュー作を今の自分が再評価すると100点満点中何点?
    65点

  • またその理由は?
    絵も仕上げも下手ですし、このレベルでよく掲載して
    くれたな〜と思います。
    ただ、それまでも既存の作品にはとらわれない“勢い”だけは
    ありましたね。これは、それまで成年漫画をあまり読んでなかった
    事が幸いしただけですが

  • マンガ家としてデビューするために必要な事はなんだと思いますか?
    情熱。
    それさえあれば編集さん、読者にも自分の気持ちは伝わります。
    ただ、僕自身デビュー自体にはそれほど価値のある物とは

    考えていません。
    これは 一番最初に編集さんから教えて頂いた事ですが、
    「面白いモノは時間さえかければ誰でも出来る。

    デビュー作が面白くてもそれを続ける力が無ければ
    漫画家としてやっていけない。
    それを支えるのは漫画に対する真摯な気持ちと情熱だ」
    いまでも自分が漫画家としていられるよう必死です

  • これからマンガ家を目指す人達になにか一言
    漫画家になるのは簡単です。
    でもそれを続けるのはもっと大変です。
    その覚悟をもってデビューしましょう。

    あと、どんどん持ち込みましょう。
    良い編集さんとの出会いが自分を成長させてくれます
 1968年5月12日生まれ。岐阜県出身。
 1989年4月、富士美出版「キャンディータイム」にて『トマト倶楽部』(成年向けコミック)でデビュー、連載開始。  同年10月、辰巳出版「ペンギンクラブ」にて『魔法の詩保ちゃん』(成年向けコミック)を連載開始。本作品はのちにビデオアニメ化された。1992年7 月、同誌にて『monoほんモノロジィ』連載開始。
 1994年5月、講談社の「週刊ヤングマガジン増刊ダッシュ」に掲載された『めぐみ○火白書』で一般誌デビュー。1996年に「週刊ヤングマガジン」本 誌にてインターネット時代に先駆けてパソコン通信の世界の恋愛を描いた『オレ通  AtoZ』、翌1997年にバーチャルアイドル制作の現場をリアルに描いた『RiNGO digital apple  magic』連載。1999年8月より「別冊ヤングマガジン」にて代表作『イオ』の連載を開始し、現在に至る。『イオ』は業界初の本格ダイビング物とい うジャンルに、氏が得意とするラブストーリーと冒険物の要素を取り入れた意欲作で、現在単行本8巻を数えるヒット作となった。最新刊第9巻は2004年 6月刊行予定。
 マンガ以外の仕事としては、PS用ゲーム『スターオーシャン  SecoundStory』(エニックス/1998年7月発売)のキャラクターデザインを手がけている。

【恋緒みなと先生
コミックスリスト】
 以下は成人コミック
  • 『いけないマジカルハート!』 全1巻(フランス書院)

  • 『トマト倶楽部』 全2巻(茜新社)

  • 『魔法の詩保ちゃん』 全2巻(茜新社)

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