【質問と解答】

Q:「突き抜ける」とはどういうことでしょうか。以前投稿したときに、そのジャンルで突き抜けた作品でなければデビューできないというアドバイスをいただいたのですが、突き抜けるということがどういうことなのかぼんやりとしかわかりません。雑誌を読んでいても、掲載されている作品のどこが突き抜けているのか、動きの激しいバトル漫画や、ものすごく個性的な漫画ならともかく、恋愛モノとかアクションの少ないものはよくわからないのです。そのアドバイスと同時に、雑誌のカラーと合わないといわれて色々悩んでおりますので、わかりやすく説明していただけると助かります。よろしくお願いします。

A:「突き抜ける」という言葉のニュアンスから、激しい表現をイメージしてしまいますが、「突き抜ける」のは何もバトル漫画やギャグ漫画に限ったものではありません。他の人より頭一つ出た個性を持ち得ていること、読者に対して主張できるアピールポイントを持っていることを指していると考えてください。よく「個性がない」という評価を聞くと思いますが、オリジナル作品である以上、本当に個性がない作品などというものはありません。読者に対して他作品と差別化できるだけの個性をその作品が主張し得ていない、つまりアピール度が低いことを指しているわけです。また、アピールポイントはセールスポイントでもあり、「作品のウリ(売り)」とも表現されます。要するに、「突き抜けてない」「個性がない」「ウリがない」という評価は大抵の場合、ニュアンスこそ多少違えど同じことを言っているのです。ニュアンスこそ違えどと言ったのは、「個性」とは必ずしもプラスの意味だけを示さず、「ウリ」はプラスの意味合いにしか使用しないといった違いがあるからです。雑誌のカラーと異なる個性は受け入れられませんし、そもそも一般受けしない(大多数に受け入れられない)個性というものも存在するからです。そういった個性の絵柄・作風は「クセが強すぎる」と表現されます。そして、「突き抜ける」という場合にはやはり個性を「強く」主張するという意味合いが出てきます。ですから、その言葉からバトル漫画やギャグ漫画をまず思い描くのはあながち間違いではありません。

 では、恋愛漫画で「突き抜ける」にはどこをアピールすべきでしょうか。漫画ですから絵が作家や作品の第一印象になるので重要なポイントではありますが、絵に関しては「突き抜けた」という表現はあまりしないので、ここでは置いておきます。さて、ネームを作る上でまず第一はキャラクターです。別に、個性を無理に出そうと突拍子もないキャラクターを作る必要はありません。読者に魅力的と思ってもらえるキャラクターというのを今までより意識してエピソード作りをしてみてください。エピソードもキャラを魅力的に描くための要素の一つです。どこかで見たようなエピソード、ありきたりの会話やリアクションでは読者の心は動かせません。ネームを切るときに、このエピソードで本当にいいのか、この台詞回しで読者の心に届くのかと問いかけてください。エピソード作りに差が出るのが、自分自身の体験したり見聞きした経験や書籍・映像の知識などです。あなた自身の日々の積み重ねがエピソード作りに役立ちます。もちろん、それで足りない知識は作品ごとに取材しなければなりません。そして、構図や演出も自分なりの工夫をこらしましょう。これも無闇に突飛な構図や奇抜な演出をしろということではありません。過去の漫画を読んだり映像作品を観たり、絵画や写真の構図の理論や演出理論などの知識を学ぶことは選択肢の幅を広げてくれます。その上で、自分の作品の構図や演出を考えましょう。どうすれば読者に魅力的なキャラクターを描けるのか、知識と経験をもとに考えることで自分自身の「突き抜ける」ポイントを見出してくださ い。

 雑誌のカラーについての質問は、2009年6月16日の「雑誌のカラーとは?」と3月15日の「雑誌のカラーに合わせるべきか?」という質問の回答をご覧ください。それらの回答で足りないようでしたら、雑誌名(回答には掲載しません)、あなたの作品内容、どういう点で合わないと言われたのか等々、もっと具体的にお聞かせください。

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