【質問と解答】

Q:専属契約というものがよくわからないので教えてください。「専属契約」とは「契約中は結果(作品)が出せなくてもお金が入る」ものだと思うのですが、その専属契約がない雑誌社の作家さんは連載中以外はバイトしながら生活費を稼ぎつつ連載のための作品を仕上げるわけですよね? そうなると、投稿中の素人と立場はあまりかわらず、どうしても専属契約料で暮らしていてる人よりクオリティの低いモノになってしまう気がします。投稿中であれば賞をとらせて、その賞金で何ヵ月分かの生活費にあてさせて、その間に作品を仕上げるのかな、とも思っていたのですが、デビュー後はそうはいきませんよね?? 一度デビューして目がでない作家さんは皆バイトとの二足わらじなのでしょうか? それとも連載経験がなくても見込みありと見られれば専属契約というものは発生するのでしょうか? 専属契約は「連載作家」だけの特権なのでしょうか? それとも雑誌社によっては連載作家であっても「専属契約」がないところもあるのでしょうか? もしかして集英社のジャンプだけ? それとも週刊連載作家だけ? 雑誌社の中でも「専属契約」は「売れてる雑誌」の作家だけ? 特にそれを理由に投稿雑誌を選ぶわけではありませんが、もしもどちらかの二択になった場合「専属契約」があるのとないのとではモチベーションも違いますし、作品にも影響すると思うので知っておきたいです。教えていただければ幸いです。


A:専属契約については、各社規定が異なるのですが、標準的な契約の話をします。まず、専属契約というのは「契約中は結果(作品)が出せなくてもお金が入る」という甘い考えは捨ててください。確かに専属契約料は全額前払い、もしくは契約期間中に分割して定期的に支払われるもので、成果が出せなくても返却を求められるものではありません。しかし、契約期間中に連載に向けての積極的な準備が求められ、一定の成果が出せない場合は次期契約更新時に打ち切られることになります。連載経験がない新人にも適用されますが、新人の場合は連載陣のヘルプ(臨時アシスタント)に呼び出されることもあります。また、契約期間中は他社の仕事を受けたり、投稿したりすることは一切できません。他社の仕事をしない代償として一定金額の収入を保証するというものが、専属契約の本質です。ですから、当然のことながら、契約期間の長さや契約金にもランクがあります。金額的には桁は違いますが、プロ野球の契約金を考えてもらえればイメージしやすいと思います。連載経験のない新人の場合は半年ごとの更新が一般的です(出版社によって異なりますが)。金額は言えませんが、一人暮らしだとバイトをまるでしないで生活するにはちょっと足りないくらいでしょうか。連載作家だと、オール専属制をとっている週刊少年ジャンプを除けば、ある程度キャリアを積んで仕事のペースをつかみ他社からもオファーが来るような作家は、編集部が専属契約を求めても断るケースが多いです。専属契約料よりも連載を1本増やすほうが収入もずっと多くなりますし、1本の連載だけでなく色々な舞台(雑誌)で色々な編集者と組んで色々な作品を描 いてみたいというクリエイターとしての欲求もありますから。そういう方は連載の切れ目でも十分すぎるほどの蓄えがありますので、生活に困ることはありません。つまり、専属契約はいいことづくめというわけではなく、むしろ出版社が作家を囲い込みたいという考えのもとに設けている制度なのです。もっとも、新人賞を獲ったばかりの新人作家にとってはバイトの時間を減らして創作に集中できるわけですから、契約金は魅力的でしょう。専属契約制度があるのは大手出版社に限られ、新人作家の場合に対象候補となるのは、新人賞で大賞(名称は様々でしょうが、一番上の賞)とそれに次ぐ賞の受賞者、読み切り数作を経て連載が近いと目される方です。専属契約料を出すのは出版社ではなく編集部予算からなので、最終決定は編集長が行います。なお、専属契約を受けるかどうかは作家に委ねられるので、他社・他誌に並行して投稿活動をしている方は、専属契約料を取るか他誌への投稿の自由を取るかよく考えてくださ い。

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