【質問と解答】

Q:僕は16歳なんですが、漫画家を目指しています。ですが、絵が全くうまく描けません。顔は描けても体が描けないんです。体を描いたとしても、下半身と上半身のバランスがめちゃくちゃで、小学生レベルです。なんとしてもデッサン力をつけたいんですが、何かいい方法があったら教えてください。




A:人物が上手く描けないのは、人体のパーツの比率が感覚的につかめていないのと、人体の関節や筋肉の動きを理解できていないためです。これらを身につける基本は人物デッサンです。ことさらに人物デッサンの勉強をしていなくてもキャラの体をバランス良く描ける人もいますが、そういう人は生来観察力が優れていて人物や物の形を把握する力に長けているか、幼い頃から漫画の模写を繰り返しているうちに自然とバランス感覚が養われているのです。そういったアドバンテージを持っていない以上、意識的に人物デッサンに取り組む必要があります。  人物デッサンの練習法や留意点については専門書を読んでください。ネットにも人物の描き方を公開しているサイトがいくつかありますので探してみるのもいいでしょう。デッサンの素材は、身近にモデルになってくれるバランス体型の知り合いがいればポーズをとって写真を撮らせてもらうといいですが、いなければ市販のポーズ集などを買ってきましょう。また、人体の関節や筋肉の動きをより知るために美術解剖学の本を読むとデッサンの参考になります。
 さて、人物デッサンで自然な人体の動きやポーズを身につけることはできますが、人体バランスはあくまで実際の人間のもので、漫画的なデフォルメされたものではありません。リアルな劇画系の絵柄であれば人物デッサンどおりに描けばいいのですが、一般的な少年漫画や少女漫画では絵柄によって程度の差はあれど漫画的なデフォルメをきかせる必要があります。
 その漫画的な人体バランス感覚も並行して養うため、自分が目指す絵柄の系統の既成作品を教材としてトレース練習をしましょう。この練習は漫画の原画サイズで行ってください。B5版型の雑誌であれば、誌面を120パーセント拡大コピー、B6判型のコミックスであれば172パーセントに拡大コピーすれば、大体元のB4原稿サイズになります。
 バランスを自分の手に感覚で覚えさせるのが目的ですから、横に置いて模写するのではなくトレース台でなぞってください。鉛筆の下絵からペン入れ、ベタ入れまでするようにしましょう。その際に背景や効果線、トーン処理も含めた仕上げをすると、人物だけではなく総合的な作画の勉強にもなります。
 デッサンにしてもトレースにしても2〜3枚描いて身につくものではありません。練習は日課として行うのが理想ですが、最低でも週に一度の練習を半年から1年は続けるようにしてください。単なる反復練習ではモチベーションが上がらず、続けていくことは困難ですので、自分なりに短期的な目標をたてて定期的に達成感が得られる工夫をしましょう。トレース練習では、好きな作品の原稿を1ページ丸ごとトレースして複製原画を自作すると思えば、なかなかに楽しいと思いませんか? 練習の中に楽しみを見つけていく──それが継続のコツです。


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