【質問と解答】

Q:お尋ねしたいのですが、商業誌で作品を発表する場合、実在するバンド名やバンドのメンバーの名前を作中の会話で出す(誹謗中傷一切無く)のは問題ないでしょうか? またその際、似顔絵を描くのは問題ありませんか?




A:以前にも著作権に関する質問への回答で述べたのですが、この手の問題の判断はケースバイケースなので、商業誌での仕事の場合は担当さんに相談してください。微妙なケースでは編集部ごとに判断が分かれることもあります。事前に相談しておけば、もし問題が生じても事後の対応が迅速に行えますし、何より作家サイドにとっては自分で責を負わずにすみます。
 ここからは一般的な判断として語ります。通常、質問の内容のように実在する団体、人物の名称を会話で出したとしても、誹謗中傷的な内容でない限り一般的知識を登場人物の台詞を通して述べているにすぎないので問題はありません。しかし、似顔絵は肖像権の問題がからんでくるので基本的にはNGです。背景の一部としてポスターやCDジャケットを描くことは著作権の許容範囲内ですが、会話で出しておいてその人物をクローズアップするわけですから、背景の一部とは認められない可能性が高いのでその手も使えないと考えたほうがいいでしょう。もっともその辺は、担当に実際にネームを見せて、構図やコマの流れから判断してもらってください。背景の一部とかでなく、どうしても単独で肖像画が作品に必要なら編集部を通して、当人もしくは当人の代理人(バンドの場合は所属事務所になるでしょうか)に許諾を得たほうがいいでしょう。ネームや下絵を提出してチェックを受けることになるでしょうが、変な使い方をしていない限り無下な対応はされないと思います。ただ、私が経験した過去の事例でこんなことはありました。作品の扉ページに某有名歌手の顔写真入りのジャケットを大きく使いたいと作家が言うので、所属事務所に許諾を求めたのですが、たまたまその直前に出版社の別の部署の週刊誌がその事務所所属のタレントのスキャンダルを掲載して関係が険悪になっていたため、断られました。とんだとばっちりですが、先方にしてみれば編集部が違えど同じ出版社の雑誌ということですね。その作家にとっては運が悪かったとしか言いようがありませんが、商業誌の世界ではそういうこともあります。

その他のご質問は、フォームからお願いします。