【質問と解答】

Q:25歳です。うつ病を患い、漫画家の夢を諦めるかどうか悩んでいます。大学卒業後、運よく東京で就職できたので、会社員をしながら漫画家を目指そうと上京しました。ですが、情けないことに就職後1年でうつ病になり、1年会社を休職していました。そして、当時は復職をするつもりでしたので、休職中に新作と旧作を携えて持ち込みに行きまして、担当さんについて頂きました。病気により休職中であること、生活のために漫画家として目処がつくまでは会社勤めと両立したい旨はその時に担当さんにお伝えしました。なのですがその後、会社規程の休職期間中に、復職するまで回復できず、当時勤めていた会社を退職、実家に戻って親のすねを齧りながら、病気の療養、つまりニートをはじめました。それでも私は、必ず病気はよくなると信じて、これを機に漫画家一本に的を絞り頑張っていこうと一年半ほど療養と制作を並行していたのですが、今年の1月くらいから体が動かなくなってきました。精神疾患でそんなことはありえないと思われるでしょうが、日によっては本当に布団から起きることもできず、親に食事を布団まで持ってきてもらう始末です。もちろん絵を描くのも、体調がいい時しか出来ません。また、昔のように考えがまとまらなくて、ストーリーなども全く考えることができなくなりました。でも、これは1月以前でもあったことなのです。具体的に言うと、去年の8月にものすごく体調が悪くなった時期がありまして、その時は担当さんと連絡を取りながら、体調に合わせてお休みを頂いていました。ですが、今年の1月ごろから、特に体調の上下が激しくなり、全く自分でも自分のことが分からない状況が続き、 「こんな自分が漫画家を目指すなんて、それに担当さんを巻き込むなんて許されないし、向こうだってこんな使えない人間はいらないはずだ。もう私は漫画家を目指してはいけないのだ」と考え、連絡を絶ってしまいました。ちなみに担当さんとはいつもこちらから連絡するばかりでしたので(連絡をすれば丁寧に指導してくださいますし、ちょっとした世間話などもさせていただいてました)、こちらの相談室で言うところの『期待されていない新人』なのだと思います。でも、無断で担当さんと連絡を絶ったという不義理を行った事は、言い訳の出来ない事実です。また、病気は短期で治ってればよかったのですが、もう長期と呼ばれる期間に入り、一生治らない可能性も高くなってきました。治るとしても5年先か10年先か、もう漫画家を目指すような歳ではなくなっていることが容易に想像できます。私はもう漫画家を目指すべき人間ではないし、そんなわがままを言ったところで何の意味もないことは分かっています。それでも、何度考えても、周りに何を言われても、全く諦める気になれないのです。担当付きという、周囲からすれば少しは見込みがあるかもしれない肩書きも消え、私がもう、諦めることしか出来ないのは明白です。自分でも分かっています。趣味で続ければいい、出来ることだけやっていればいい。漫画なんて描かなくても生きていける。そう言われる度に、悔しくて悲しくて、胸が張り裂けそうになるのです。描きたくて描きたくて仕方がないのに、描くことができなくて、でもそれが病気のせいなのか、甘えているのかも分からず、ただただ自分を責めながら、それでも体調が少しでもいい時は何かしら作ろうとしてしまいます。こんな社会のゴミを、漫画編集者の立場から見てどう思いますか? 長々と書いてしまったのですが、結局私は諦めないでもいいのか、諦めなくてはいけないのか。ただそれだけを知りたいのです。沢山の人に迷惑をかけておいて、自分のことしか考えられていない、こんな事を質問するなんて恥ずかしく思います。しかも結局努力は出来ないとほざいている人間が、です。厳しい言葉で結構です。少しでも何か答えていただけたら嬉しく思います。どうかご返信をよろしくお願いします。




A:希望を持ってくださいと言うのは簡単ですが、そんな無責任なことを白々しく言える性格ではありませんし、あなたも望んではいないでしょう。病気でなくともあなたに漫画家としてデビューできる力があるかどうかはわかりませんが、一つ確かなのは病気を治さない限り商業漫画家にはなれないことです。商業誌で描くプロの漫画家というのは連載を求められます。これは商業漫画誌の収益構造上、雑誌の連載作をコミックス化し、コミックスの売り上げで雑誌を維持するようになっているためです。ところが、あなたの場合、仮にデビューできたとしても、病気である限り年に読み切り1〜2作描ければいいほうで(今の状態ではそれも厳しいでしょうが)、連載など到底不可能です。つまり、編集部としてはデビューさせても雑誌の戦力としてあてにできないということです。実際のところ(実例を知っていますが)、うつがひどいと打ち合わせの電話のやりとりも満足にできないはずです。ですから、今のあなたがすべきことは病気の治療に専念することです。病気について詳しいわけではありませんが、今漫画を描かなければ描けなくなるという焦りが病気を悪化させているような気がします。軽度のうつ病ならばそれを抱えて(病院に通い抗うつ剤を服用しつつ)仕事をしている人間は、私の周囲の漫画家にも編集者にも何人もいます。彼らのように少なくとも社会生活が営める程度に回復するまでは、頭の中でストーリーは考えても執筆に焦らないことです。先々のことは回復してから考えましょう。

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