【質問と解答】

Q:使い回されてきたジャンルについての質問です。魔法、悪魔、天使、神、霊、新学期、部活‥‥キリがありませんが、このような物を何のひねりなく使用するのは、編集部さん的には減点でしょうか? 既存の人気作品も、これらの題材を使用していたとしても、少しひねりを入れているのがほとんどです。




A:「新学期」というのはこの中でちょっと違うと思いますが、新人賞の投稿作で多く見られる題材ですね。挙げられたほとんどの題材はファンタジーでは必須の要素ですからファンタジー系雑誌への投稿作品なら多いのは当然とも言えますが、一般の少年漫画誌や少女漫画誌、青年誌・ヤング誌でも数多く見られます。他には「吸血鬼」「死神」などを扱った作品は一回の新人賞に大抵3本以上は投稿されてきます。部活ものはかつてはスポーツ漫画が主流でしたが、『けいおん!』アニメのヒット以降、少人数の文科系部活ものの投稿が増えてきました。『僕は友達が少ない』の隣人部、『氷菓』の古典部、『ココロコネクト』の文研部など最近のTVアニメでも多く扱われていますが、限られた人間の集まりの中でドラマを描くのに適しているんですよね。同様の理由で生徒会ものも多いです。
また、「吸血鬼」や「死神」を題材とした作品が商業作品でも数多くあるのは、設定自体にロマンがありそれを好む読者が数多くいるからです。読者のニーズに応え、自らもクリエイターとして題材に深い関心を抱いて創作意欲をかき立てられるならば、それらを扱う姿勢自体は間違っていません。ただ、意識的にしろ無意識にしろ、流行のものにただ影響されてひねりもなく題材にした安易なフォロワー作品は編集部には評価されません。編集部は、作者の創意工夫、オリジナリティを見たいわけです。
「魔法」を前面に押し出した作品であれば、その作品世界での魔法概念や法則、また魔法使用時の演出に作者の独自のアイデアが求められます。
もっとも、「魔法」や「吸血鬼」といった題材、部活や生徒会といった舞台に作品の重点を置かず、人間ドラマを主眼とする作品の場合はその限りではありません。たとえば、たまたま通りすがりの吸血鬼に襲われて自分も吸血鬼になってしまった女の子を主人公とした一風変わった学園恋愛コメディーの読み切りを描こうとするなら、「恋愛」のほうに作品の重点がありますから、「吸血鬼」要素に特殊な設定を加えて説明にコマを割くより、その部分は読者のお約束知識に委ねたほうがテンポがよくなりますし、ストーリーの主眼を絞れます。これが連載となると、読み切りの場合とは少し話が変わってきます。先々の展開の広がりを考えて、「吸血鬼」設定になんらかの独自設定を保たせるなり、吸血鬼サイドの世界もストーリーに絡ませるなどのひねりや舞台の拡大も考慮に入れていいでしょう。