【質問と解答】

Q:青年誌に何度か掲載経験のある者です。なかなか連載ネームが通らずやきもきしています。雑誌を移ろうかな‥‥などとも考えているのですが、色々素朴な疑問があるので質問させてください。

1)何度か掲載経験がある私が新人賞に応募できるのでしょうか?

2)応募条件に「プロアマ問わず」とありますが、実際にプロ(単行本を出した経験のある作家)が新人賞を受賞したことはあるのでしょうか?

3)若い編集が担当につくとベテラン編集に比べ連載をとるのが厳しいという話を聞きましたが本当でしょうか?

4)持ち込みの電話予約をした場合、電話をとった方が担当になるケースが多いと聞きましたが、電話を取る編集は若い編集である確率が高いでしょうか?

5)あえて投稿という形をとれば自分の作品を気に入ってくれた編集さん (上手くすればベテラン編集さん)が担当に付く可能性が上がるように思えるのですが、どうでしょうか?

6)都内在住なのに持ち込みではなく投稿をする人はどの程度いますでしょうか? またそういう人に対する印象はどうでしょうか?

7)連載ネームが通るまで、会議や編集長にダメ出しを受ける回数は平均何回くらいでしょうか? 何回目のリテイクで別のネタに切り替えることも考え始めるべきでしょうか?

 今の担当さんが経験2〜3年の編集さんで、編集部内での力も弱く、性格もいじられキャラっぽいため、その辺の押しの弱さが自分の作品のコンペに影響してくれるんじゃないかなと不安になってしまいました。とてもいい人なのですが、一人で連載を起こした経験もなさそうですし、雑誌を移るなら今度はある程度戦略的に行きたいのです。




A:1)「雑誌掲載経験のない方に限ります」という応募条件でもない限り、どこの新人賞でも大丈夫です。私のいる編集部の新人賞でも他誌での掲載経験のある方は数名はいますね

 2)雑誌にもよりますが、読み切り掲載経験、短期連載経験のある方が新人賞を受賞することは珍しくありません。やはりキャリアがあるので絵やストーリーもレベルが高く、絵柄が古くさかったり雑誌に作風が合わない方を除けば、上位の賞に入る率は高いです。ただ、単行本を出しているクラスのプロとなるとあまり思い当たりません。プロとして企画持ち込みというケースがほとんどで、新人賞への応募という形をとらないのがほとんどだからです。私も長年編集をやってきて、単行本を出しているプロの方の新人賞への応募は一度記憶にあるくらいです。その方の場合は、直接連絡してご本人と相談した上で賞の選考対象から外れてもらい、改めて打ち合わせをして連載していただきました。

 3)連載企画の最終決定権は編集長にあるので、最終的には編集長による作品評価次第ということになります。つまり、編集長基準にはなりますが作品の質次第ということは間違いありません。ただ、雑誌の掲載枠は決まっていますから、同レベルの連載候補があるの掲載枠はひとつしかない場合、あるいは編集長があまり得意でないジャンルの作品を評価しなければならない場合は、副編集長や次長など編集長が信頼する人間の発言が掲載の可否を左右することになります。ですから、そういった部内での発言力の強い編集者が担当であれば、企画が通りやすいということはあります。もっとも、少人数の編集部ならともかく大人数の編集部ではそういった役付きの編集者は管理職としての仕事やベテラン作家との付き合いに時間を割かれるため、あまり新人を直接担当することはありません。大きな編集部であればあるほどその傾向が強くなります。ただし、若い編集者の後見となって新人のネームの相談にのったり、編集長に企画を提出するときに口添えをしたりはします。なので、編集長に影響力を持っているベテラン編集者と密に接している編集者であれば、若い編集者でも間接的に発言力を有することができます。つまり、ベテラン編集者が担当だと確かに連載はとりやすいけれども、若い編集者だと駄目というわけではないということです。もっとも、経験が浅いにもかかわらず部内コミュニケーション能力が低い編集者だと、企画を通すのはよほど対抗企画と差がない限り厳しいということでもあります。

 4)外からかかってきた電話は若い人間が率先してとるのが社会常識なので、若い編集者が出払ってでもいない限りはそうなりますね。もっとも、小さな出版社、小規模の編集部では毎年新人を入れる余裕はないので、部内で年齢が一番下なのが30代のベテラン編集者だったりすることも珍しくないのがこの業界です。

 5)そうですね。それが持ち込みを経ずに投稿する最大のメリットでしょうか。

 6)かなりいますよ。持ち込み受付は基本平日の昼間なので、仕事や学校の都合で持ち込みしたくてもできない方はたくさんいます。新人賞の投稿でも持ち込み以外の方が圧倒的に多いので、特に印象が変わることはありません。

 7)企画会議や編集長に提出するのはのネームやキャラデザイン完成形ですから、せいぜい2回までですね。担当とのネームのやり取りはその前段階になりますが、そこでのリテイクは部分的なものを除けば3回が目安です(台詞や構図、コマ割りの微修正などの部分修正は数に入れません)。3回リテイクをかけて未だ完成形が見えてこないようでは、一度頭を切り替えて別の企画を考えるべきです。その企画が惜しいものであれば、時間をおいて再チャレンジしましょう。確たる方針も見出せないまま、だらだらと惰性でネームを弄くり回すのは時間の無駄です。