【質問と解答】

Q:デビューして1年ほど、読み切り二回掲載程度の新人です。担当編集と人間的にも、漫画についての考え方でも相性が合わず疲れ果ててしまったので、出版社を変えて再チャレンジしてみようかと検討中です。どんな雑誌でもいいので、機械的な反応しかしてくれない今の担当とは違って、自分の漫画を熱心に見て一緒に面白い漫画を追求してくれるような編集者さんと出会えればと思い色々な雑誌を検討しました。
しかし、色々な他の出版社の雑誌を読んでみると、自分が面白いと思える漫画が載っているところがあまりなく、やはり今の出版社の漫画の傾向が好きなのだと再発見しました。ただ、やはりもう今の編集さんとこれからもずっとやっていくのは精神的に辛いです。前の担当さんの辞任で今のお偉い編集さんに担当が変わってから作品がいくつか世に出たので感謝はしているものの、漫画や作家に対しての情熱の無い冷たい考え方にどうしても納得できず、作品は高評価なのに担当とはどんどんギスギスしていき、その後全く企画も通らなくなりました。あちらは具体的でない理想を語るばかりで、自分の漫画論以外の作り方は全く許してくれないし、僕自身を見て個性を伸ばしてくれるようなアドバイスは全くありません。あちらももうこちらの力を信用していないといった感じで、連絡は来るものの、当てにはされていない感じです。今の担当になってから全てを否定されてばかりで、漫画を描くこと自体が辛くなってきています。
今の出版社は、3つほど雑誌が分かれているのですが、今の担当編集が担当している作品・雑誌は自分はあまり好きではありません。今の担当は編集部内での権力もあり、逆らうとどうなるかわかりません。同じ出版社の姉妹雑誌がとても好きで、出来れば今の雑誌を離れてそこの編集さんに担当してもらって頑張ってみたいと思うのです。
ただ、社内で完全に編集部が分かれているわけでもなく雑誌を掛け持ちしている編集者もいます。また、今の担当からは僕なんかの担当になってくれる人は絶対いないから担当替えを申し出ても無駄だと、以前言われたことがあります。なので、担当替えをお願いしても今のままではその雑誌に移ることは無理そうな気がします。そこで、今の担当とは縁を切ってもう一度その姉妹雑誌に投稿から再挑戦したいと思うのですが、やはり同じ会社でそういうのは失礼に当たるし、無理なのでしょうか? その際、もう一度その雑誌に投稿から始める事を今の編集に伝えておいた方がいいのでしょうか? ただ、この出版社自体の漫画に対する考え方が、別の編集になったからといって今の担当編集とあまり変わらない気もするので、もう雑誌の好き嫌いのこだわりは捨てて、自分の漫画を熱意を持って見てくれる編集者さんと出会うために、好きな漫画が無くても色んな他誌へ投稿や持ち込みをしたほうがいいのか悩んでいます。
はっきり言って、まだ連載も経験したこの無い新人が、こんなことを言っているのはわがままだと思います。今の編集で企画が通らないなら、その企画は他誌や姉妹雑誌に持って行ってもダメだということは重々承知しています。しかしあまりに全てを否定されすぎて完全に自分に自信がなくなっているので、少しでも可能性があるなら、たった一人の編集の評価で決められるのではなく、色々な方に自分の漫画を見て評価してもらいたいのです。今の雑誌で無理でも他のマイナー誌ならいけるなどといった幻想を抱いてはいませんが、こんな考えはやはり甘いのでしょうか。僕はどうしたらいいのでしょう。




A:いろいろ迷っているようですが、結局のところあなたの中で、今の担当さんとはどうしても合わないので舞台を変えて再チャレンジしたいという結論は出ているように感じました。それを大前提とすると、あなたのとるべき道は、同じ出版社の姉妹誌に投稿するか、別の出版社に投稿もしくは持ち込みするかの二択ということになります。
 前者の場合、姉妹誌というのが編集部として独立しているのか、今の雑誌の増刊や別冊にあたるのかが問題になります。もし、今の雑誌と姉妹誌が同じ編集部から発行されているとなると、姉妹誌に投稿しても今の担当さんが選考することになります。A誌の増刊や別冊であっても必ずしも「A増刊」とか「別冊A」とかいう名称が付けられるわけではないので、誌名だけでは独立した雑誌なのか増刊や別冊扱いなのかは判断できません。あなたの質問文を読む限りでは同じ編集部から発行している可能性が高そうですが、これを確かめる手段があります。雑誌の裏表紙(表4)のノド側を見ると雑誌のデータが小さい文字で印刷されています。その中で、「編集長」もしくは「編集人」の名前が記載されているはずです。これが今の雑誌の編集長の名前(知ってますよね?)と同じであれば、同一編集部、異なれば別の編集部ということになります。別の編集部であれば、姉妹誌のほうに投稿して新担当がつく可能性はあります。ただ、雑誌を兼任している編集者がいるということなので、仮に編集部が独立していてもあなたが姉妹誌に投稿した情報は今の担当さんの耳にすぐ入りますので、口出ししてくるのを避けられない可能性が高いです。
 後者の場合はあなたの好きな雑誌がないということが一番の懸念事項でしょう。ですが、質問文の文面を読む限りでは、あなたは色々な他誌を恒常的に読んでいる方ではなく、ほとんどの雑誌は検討するにあたって初めて読んだように見受けられます。定期刊行雑誌に掲載されているのはほとんどが連載漫画ですから、単行本で追っていたのでもない限り途中から読んでもなかなか入っていきづらいものです。ずっと読んでいる雑誌と比べてストーリーの理解度やキャラクターへの共感度も足りないのは当然ですし、知らない作家であれば絵柄もすぐにはなじめないでしょう。そのあたりを差し引いて検討すべきです。
 以上、論点を整理しましたので、今の担当さんの介入のリスクを承知で同じ出版社の姉妹誌に投稿するか、最初はなじめなくとも他の出版社に舞台を求めるか、最終的にはあなた自身で決断してください。