【質問と解答】

Q:「なんで漫画家になりたいと思ったの?」と言われ、分からなくなってしまいました。自分は昔から漫画が好きで、「漫画家になりたい!」と思ってきました。しかし、この前担当さんに、「どういうものを描きたくて漫画を描くのか、考えてごらん」といった感じのことを言われて、返答に困ってしまいました。友人にも「なんで漫画家になりたいの? 同人は駄目なの?」と言われてしまい、考え込んでいます。商業作家が、ただ漫画が好きで漫画家になりたい! ではダメなことは分かっていますが、今まで漫画が好きだから漫画家になりたいという風に思っていて、深く考えたことがありませんでした。一体どうしたらいいでしょうか?




A:担当編集者がついているということは、投稿者にしろある程度の漫画のキャリアのある方なのでしょうね。でしたら、単に漫画家という職業に憧れていたというだけではないはずです。自分が面白いと感じるもの、自分の感情や感動、自分の思想や主張等を漫画という表現形態を通してより多くの人たちに共感してほしい、より多くの読者と共有したいという思いがあるでしょう? よく投稿者の方や新人漫画家がどういうものを描いたらいいのかわからなくなったということがありますが、担当さんの言いたいことは、初心に返って自分の感じる面白さ、伝えたかった感情や感動の原点を思い出してほしいということではないでしょうか。 商業作家も同人作家も漫画を描く上で「自分のために」という意識と「読者のために」という意識を持っていますが、「自分が面白いと感じるもの、自分の感情や感動、自分の思想や主張等を表現したい」という点が「自分のために」という面であり、「それらを他の人に伝えたい」「読者と共有したい」という点が「読者のために」という面です。商業作家と同人作家、両者の違いはその意識の比重の差にあります。同人作家は「自分のために」という面が強く、そんな自分の漫画についてこられる読者だけついてこいというスタンスです。つまり、自分と指向、趣味、嗜好をあらかじめ共有している、言うなれば「仲間内」に作品を発信しているわけです。一方、「自分のために」という面も持ちつつ「自分が面白いと感じるもの、自分の感情や感動、自分の思想や主張等」を仲間内を超えて「より多くの人に広めたい」「より多くの読者と共有したい」と意識するのが商業作家です。指向や趣味、嗜好をあらかじめ共有していない人々にそれを伝え広めるには、表現にもドラマにもわかりやすさと説得力が必要です。意識してそうした作品創りを行い共感の輪を広げていくところに同人作家との差があります。あなたが、今後も商業作家を目指すか、それとも同人作家に転向するかはあなたが漫画に対して何を求めるか次第ですが、いずれにせよ初心に返ってみることが今のあなたにとって大切です。何も難しく考える必要はありません。みんなに伝えたい自分の「面白い」は何だろう? まずはそこが出発点です。