【質問と解答】

Q:私は某誌で漫画賞を獲得して、その後すぐその雑誌で連載デビューさせていただきました。それからもう一年が経つのですが、最近漫画を描くことに喜びや楽しみを感じなくなっています。それは、漫画の内容があまりに不本意なものとなってしまっているからと思われます。そしてそのような不本意な内容になってしまうのは、私の担当編集との付き合い方に問題があるためでしょう。たとえば、「主人公をこう動かしたいな」とネームやプロットにして担当と打ち合わせをしても「そうじゃなくて、このほうがよくない?」と話の展開を提案されます。その提案が理に適っており、そのほうが面白そうだな、と私自身が納得できれば素直に取り入れます。ですが、時に設定や私の嗜好にそぐわない提案があった時に私が反論しても、「でもこの話はこういうものだから」と流されてしまいます。その結果、描きたくないものを描くことになってしまいます。もっと強く反論すればよいのでしょうが、私が連載デビューできたのはほぼその担当編集のおかげであり、「強く反論したら見捨てられるかも」「未熟な自分が間違っているだけかも」と思うと、なかなかできません。それが一年近く続き、今では設定や物語展開の無茶な部分が浮き彫りになってしまい、漫画を描く度に「こんなことできるはずないのに」「このキャラはそんな行動しないのに」という不満が沸いてくるようになって、精神的に辛い状態になっています。自分の作品のはずなのに、担当編集の考えた話に私が絵をつけているだけのように感じるのです。正直に言えば、すでに作品に対する愛着や情熱が冷め始めているのに加え、読者からの反応もほとんどなく(アンケートで批判的なハガキが少数あったことは聞きました)、今の連載を続けるモチベーションが消えかかっています。しかしその一方、空いた時間に好きな作品のキャラの落書きをしたり自分の好きな話を考える時は心が躍ります。なので、まだ漫画自体に対する愛情は残っているはずなのですが、徐々にそれもなくなっていくような気がして不安です。まるで素人同然だった私を拾ってくださり、技術的にもまだ未熟な私に連載までさせてくれた担当編集に対して感謝の念は絶えません。しかし、どうしても「もしかしたら、担当編集のやりたい話を私に描かせたいだけなのかな」と邪推してしまいます。これから私は不満や不安に耐えながらこの連載にしがみつくべきなのか、それとも心のうちを正直に担当に打ち明けてこれからどうするかを相談するべきなのか、判断ができません。他者の視点から見て感じた意見を頂ければ幸いです



A:現状は、担当編集の方との関係や連載の維持を優先するあまり「強く反論したら見捨てられるかも」と恐れて何も言えなかった頃とは、あなたの気持ちも変わってきていると思います。不本意な漫画を描き続ける状況をなんとかしたいという思いのほうが強くなっているのではないでしょうか。であれば、担当編集に思いを語り打ち合わせの有り様を変えていくことは、今のあなたならば可能でしょう。話し合いの結果、担当編集や今の雑誌と決別することがあっても、漫画への情熱を徐々に失っていく恐怖に比べれば耐えられるのではないでしょうか。とは言いましたが、それは最悪の場合であって、担当編集の方も連載作家にまであなたを育ててくれた人ですから、ちゃんと話せば応じてくれるでしょう。不満や不安はちゃんと相手に訴えなければ伝わりません。他者の意見に全く耳を貸さない作家も困りますが、編集の言うことにイエスマンでも良くありません。作家と編集のどちらの独りよがりや思い込みでもなく、他者の視点を容れることでキャッチボールしてこそ良い作品が生まれると考えます。